太陽光発電を中心に国内に導入が広がった再エネ発電設備。
設備の適切な廃棄・リサイクルの仕組みづくりに向けて、政府が検討会を立ち上げました。
『FIT制度』 開始以降に導入された太陽光発電は、住宅用で177万件・853万kW、
非住宅で68万件・5,200万kWに上ります。(いずれも2022年3月末時点)
これらの大量に導入された太陽光パネル等は、いずれかの時点で廃棄物として排出されることになるが
NEDOによる推計では 2035~2037年頃に排出量のピークを迎え、年間17~28万トン程度、
産業廃棄物の最終処分量の1.7~2.7%に相当する量と予測されています。
図1.太陽光パネルの排出量の予測(出典:NEDO)
一部では不適切な管理状態にある事案も報告されており、将来の廃棄等に対する地域住民の懸念が高まっているため
資源エネルギー庁と環境省の共同で 「再生可能エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルのあり方に関する検討会」が設置され、
太陽光や風力等の再エネ発電設備の廃棄・リサイクルに関する対応の強化に向けた検討が開始されました。
図2.情報提供フォームにおける主な相談内容(2023年3月時点)(出典:再エネ発電設備の廃棄・リサイクル検討会)
現在、市場の大宗を占めるシリコン系の太陽光パネルは、フレーム(アルミ)、ガラス、封止材、太陽電池セル(シリコン)、
バックシートといった部品に大別され、リサイクル工場ではこれらの部品を分離し、それぞれ素材利用を行っている。
図3.太陽光パネルの主な構造(出典:再エネ発電設備の廃棄・リサイクル検討会)
また、含有可能性がある有害物質は太陽光パネルの種類ごとに異なりますが、鉛、セレン、カドミウム、ヒ素の4種類がある。
シリコン系パネルであれば、ほぼ全ての中間処理事業者で処理できるが化合物系パネルについては
事業者によって対応状況が異なるため、含有物質の情報が必要となる。
また浸出水等への影響から含有物質情報がない場合は搬入を断っているケースがあるため、含有物質の「量」に関する情報も必要となる。
今後、パネル含有物質の情報登録を『FIT』・『FIP』認定基準に追加する等、
再エネ特措法の省令改正について政府は検討を行う予定としている。
図4.主な太陽光パネルの種類と含有物質(出典:再エネ発電設備の廃棄・リサイクル検討会)
現在、廃棄された太陽光パネルに関して事業者によるリサイクル義務はなく、廃棄物処理法に則って適正に処理することが求められる。
また循環型社会形成推進基本法に基づき、「1.発生抑制(リデュース)」「2.再使用(リユース)」「3.再生利用 (リサイクル)」
「4.熱回収」「5.埋立処分」の優先順位に沿った対応が必要である。
太陽光パネルは産業廃棄物に該当し、産業廃棄物の品目上は 「金属くず」「廃プラスチック類」及び
「ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず」の混合物として取り扱われている。
どこまでのリサイクルを実施するかは事業者の判断に委ねられており、現状は高度選別リサイクルのほか単純破砕処理も行われている。
図5は高度選別リサイクルの流れであるがアルミやガラス、金属の大半はリサイクルが可能である。
図5.高度選別リサイクルの流れと重量比率(出典:再エネ発電設備の廃棄・リサイクル検討会)
一般的に太陽光パネルは20年以上の使用が可能であるため、現時点での太陽光パネルの解体・撤去工事はまだ少なく、
環境省の調査によれば、直近3カ年で使用済み太陽光パネルの解体・撤去工事を受けたことがある解体工事業関係事業者は
約15%に留まっているが、その件数は増加傾向にある。
環境省は処理事業者に対し、使用済太陽光パネルの排出要因・処分方法に関するアンケート調査を
2020年度と2021年度の2年間実施している。
現時点では、パネルの回収量はわずかですが災害の発生有無による影響を大きく受ける為、
パネルの排出量・回収量は状況により大きく(10倍以上)増減する。
他方、リサイクル「量」や最終処分「量」は、2020年度と2021年度で大きな増減は見られない。
災害が少なく、パネル回収量が2,257トンと少なかった2021年度には、最終処分量 (277トン) が回収量の12.3%を占めることとなった。
図6.使用済太陽光パネルの排出要因・処分方法(2020年度)(出典:再エネ発電設備の廃棄・リサイクル検討会)
太陽光パネルの産廃処理費用は約2円/W程度であるのに対して分解処理コストは約3円/W程度と高コストであるため
リサイクルの推進には更なる課題解決が必要とされている。
環境省では 「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン」において、
太陽光発電設備の解体・撤去、リユース、収集・運搬、リサイクル、埋立処分、被災した太陽光発電設備の取扱いをまとめている。
また 「太陽電池モジュールの適切なリユース促進ガイドライン」では
より正確な性能を把握するための検査例やリユース可能な例などを掲載している。
現在、改正再エネ特措法では10kW以上の事業用太陽光発電設備に対して廃棄等費用の積立を求めており
原則、外部積立制度により一定額の廃棄等費用が担保されているが
災害や故障により破損した太陽光発電設備を修繕しないまま事業を中断し、長期間放置するケースも生じている。
図7.太陽光発電の事業プロセスと対応法令(出典:再エネ発電設備の廃棄・リサイクル検討会)
なお、事業を廃止し電気系統の接続が切れた場合でも太陽光パネルの受光面に光が当たると発電可能な状態が継続される。
このため、事業廃止後に危険な状態のまま放置されることがないよう専門知識を持った者による安全な取扱いや
解体事業者等への適正な引渡しが徹底されることが重要である。
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